――そんなときに「ギャンブル依存症問題を考える会」代表の田中紀子さんと知り合った。
高知 田中紀子さんの名前は以前から知っていました。僕が逮捕された際に「ありがとうございます」と言ったことを、マスコミは「反省していない」「ふざけている」と叩いたんですが、田中紀子さんだけがSNSで「ありがとうございますという言葉は、依存症の当事者がホッとした気持ちと本当に終わったなという気持ちが混ざって出てくる、依存症者あるある言葉だ」と擁護してくれたんです。僕が日記代わりに呟いていたTwitterに、田中紀子さんが「会いませんか?」とダイレクトメールをくれました。でも、そのときの僕は人間不信に陥っていたから、「落ち着いてから」と返事を出したのに、すぐに「近くのレストランを予約しました」と連絡が来たんです。人の話をまったく聞かない、図々しい女性だなぁと(苦笑)。でも、その強引さが彼女ならではの愛情だったんです。本人も「ギャンブル依存症」だった過去の持ち主でした。多くの依存症当事者たちに会い、回復の成功例を見てきた彼女に対しては、初対面なのに会ったその日に7時間もずっと自分のことを話し続けることができたんです。すごく安心感を覚える一方で、また騙されないかなという不安もありましたね。
――田中紀子さんに勧められ、薬物依存症の人たちによる「自助グループ」に参加したわけですね。
高知 それも強引でしたね(笑)。半信半疑でした。田中紀子さんには自分のことを洗いざらい話すことができましたが、何で見ず知らずの人たちに自分のことを話さなくちゃいけないんだと。何の得があるのか分からなかった。自助グループに参加する本質が理解できずにいたんです。参加してしばらくは、芸能界にいた習性から、その場を盛り上げよう、楽しませようと話を盛ったりしていました。笑顔で参加していましたが、心の奥では芝居して、演じている自分がいました。でも何回か参加しているうちに、自分の体験をぶっちゃけて話すひとりの参加者の言葉に、すごく感動したんです。自分と同じように考えている人がいることが分かって、心が洗われるような感覚でした。気持ちよかった。それまでは弱さを他人に見せちゃいけないと思い込んでいたのが、自分の弱さを正直に打ち明けられている姿が、かっこいいと感じるようになったんです。それからは、他の人の話も耳に入ってくるようになりました。