――自助グループのメンバーから「高知さんの怒りの根源は、お母さんにある」と指摘され、激昂したこともあったそうですね。

高知 自分でも忘れようとしていた過去です。そこを他の人に触れられたことで、自分が考えている以上の反応をしてしまった。でも、自助グループの仲間たちと出会い、「12ステップ・プログラム」(アルコール依存症者のために米国の自助グループの創始者たちが知恵を出し合い、完成させた12段階のプログラム)についても知り、自分の過去を振り返ってみることにしたんです。自分が幼いころから持っていた道徳観は自分が勝手につくったものですが、それは歪んだ認知の中から生まれたもので、自分にとっての生きづらさにもつながっていたんです。その生きづらさから逃避するために、薬物に走っていた。僕にとって大切なことは、薬物を絶っていかにクリーンに生き直すかではなく、自分の歪んだ道徳観に向き合うことでした。僕ひとりでは決して気づくことはできなかった。でも、自分自身の認知の歪みに向き合うのは、とてもきつかった。薬物使用以前に、これまでの自分を思い返し「なんてサイテーな人間なんだ。生きている価値ないなぁ」と思いました。ありのままの自分を認めるのは苦しかった。逮捕された瞬間より、つらかったです。それまで自分を大きく見せようと懸命になっていたけど、それは全部うそなんだと。今では自助グループは自分が成長するための重要なプロセスとなっています。一生、付き合っていくつもりです。