◆自分を“生活者”だと決めたらラクになった

「春画先生」場面写真
――俳優・柄本佑と言うには、まだ早かったということ?

柄本:学生の身分がなくなったら、フワフワしちゃって(苦笑)。同級生はスーツを着ていて、自分は短パンで、これはいかん、これでは無理だと、当時思ったんです。

 で、僕なりに始めたのが、シンクに食器を溜めない、万年床にしない、掃除機をかける、忙しくても部屋をきれいにしていく。つまり、それが僕にとっての社会と自分をつなぎとめていることにして、そしたら俳優の仕事がラクになったんです。自分の本分は、部屋をきれいにすること、それが俺という人間だと(笑)。

 でもそれがあるから、仕事もちゃんとできると思えたんです。何者でもない自分を“生活者”だと決めたら、ラクになったんです。

 実は、今もそうなんです。むしろ生活が基盤で、奥さんと子どもといる、そこがこの仕事をやっていくモチベーションかなと思うんです、なのでその当時から、ずっと変わっていないんですよね。生きるということは、そういうことなのかなと。