金と友人と仕事が失われた失意の日々を送っていたが、見かけた書籍で心の穴を埋めるものを見つけた。
それは、スピリチュアルコンテンツだった。
次の沼が、現れた。
真希さんは当時の心境をこう語る。
「この苦しみを招いた責任は、自分にないと思いたかったんですよね。何か超自然的な力が働いたことを、原因にしたかった。運や因縁……いわば、犯人探しに近いかもしれません」
運が悪い、方角が悪い、波動が悪い。超自然的なものに翻弄されたという、物語を求めたのだ。
満たされない不満を「ディープステート(闇の政府)」などの仮想敵にぶつける、陰謀論者の心理にもよく似ているように思える。
そうして真希さんは熱心に関連書籍を読んだり、占いに通ったり、ネットで情報をあさったりと、スピリチュアルの世界へ没入していった。
当時ハマっていたものは、幅広い。龍神、宇宙存在からのメッセージ、波動を上げる方法、引き寄せの法則、宇宙銀行、スターシード、風水、神社参拝にトイレ掃除……手あたり次第、という印象である(それぞれの説明はここではしないので、ご興味ある方は検索してほしい)。
◆目醒の扉が閉じちゃう!
2018年、そのようにスピリチュアル情報を彷徨(さまよ)うなか、ネット上で注目を集めていたスピリチュアルカウンセラーA氏のこんな言説が、真希さんのツボを射貫いた。「目醒め」という概念だ。
その言説の一部を紹介しよう。
・人類はいま、急激に次の次元へ移行している。それは大いなる宇宙の意思による、進化である。しかしその世界へ行けるのは「目醒めた人」のみ。
・目醒めにはタイムリミットがある。2021年のとある節目に、目醒めの扉は閉じられるので、直前である今が最終チャンス。
・扉が閉じたあと、目醒めることができた人は、幸せな世界を生きることができる。
◆煽られ、選択を迫られる
筆者も試しに、その人物の本を読んでみた。このあたりが真希さんの心をくすぐったのかと想像できる部分は次のような内容だ。