それに対してハリス氏は「民主主義を守らなくてはならないため、戦争は継続する」と反論しました。これは衝撃的でしたね。ハリス氏は戦争を継続してどんどん犠牲者を出す……。その一方で、トランプ氏は一刻も早く戦争を終わらせて悲惨な状況を回避しようとしています。これは際立って対照的な発言でしたが、日本ではあまり報道されていません。
――「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とのパイプはある」などのトランプ氏の発言は日本でも報道されましたが、ハリス氏の「戦争継続」はそこまで取り沙汰されていません。
川上 それが私は非常にショッキングでした。今、ガザ地域で死亡者が増え続けているため、「戦争をやめろ!」というデモが全米各地で起きています。いえ、全米だけでなく、欧州をはじめ、世界各国で起きています。その状況を知っているのかどうかわかりませんが、ハリス氏は戦争を継続させたいわけです。
――なぜ、ハリス氏は戦争の継続を望んでいるのでしょうか?
川上 「民主主義を守る」ためです。政府がそう言わない限り、アメリカという国は滅んでしまいます。民主主義の名のもと、白人も有色人種もすべて一緒になることで、アメリカ合衆国は成り立っているのです。
――国民をまとめ上げるために、常に仮想敵を立てなければならないのは、いつの時代も変わらないのですね。それを、トランプ氏は止めようとしている。実際に同氏はテレビ討論会後の9月27日に、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談しています。
ただ、同日の毎日新聞は「ゼレンスキー氏とトランプ氏、関係ぎくしゃく 侵攻巡り互いに批判」というタイトルの記事を配信しましたが、これまでの話を聞くと「メディアはトランプ氏の揚げ足を取りたいのか」という印象を受けます。
川上 繰り返しになりますが、9月のテレビ討論会で司会者は、始終トランプ氏が不利になるような質問をぶつけていました。その一方で、ハリス氏は少なくとも5日間は缶詰めで練習していたため抜かりはなかったのと、なにより主催者側の思惑が感じられました。そのため、入念に準備したハリス氏のほうが、パッと見いい感じに見えたのでしょう。