よく、10月には魔物がいるといわれる。優勢だったヒラリーが、一通の私的メールを暴露されたことで、トランプに大統領の座を譲ってしまったのも10月だった。

 では今回、10月の魔物は現れるのだろうか。

 ニューズウィーク日本版で、記者キャサリン・ファン、イワン・パーマーが寄稿している。

 毎回、土壇場で魔物が登場して形勢を逆転したりしてきたが、今回は、バイデンが突然、選挙戦から退場し、ハリスにバトンタッチしたことが最大の仰天劇だったから、これ以上の魔物は現れないのではないかという声が多いようだ。

「共和党のクリス・クリスティーがニュージャージー州知事に初当選した際の選挙参謀マイケル・デュヘイムが本誌に語ったところによると、今回はどちらの候補も公人としての生活が長く、今さら個人問題でぎょっとするような問題が出現するとは思えない。
『サプライズがあるとすれば、それは人格の問題ではなく、想定外の何かだろう』
デュヘイムはジョージ・W・ブッシュ元大統領と故ジョン・マケイン上院議員の選挙参謀も務めた人物。国内外で多くの危機が進行中の今、オクトーバー・サプライズの影響は非難の矛先がバイデン政権に向くか(結果としてハリスに打撃となるか)、両候補がどう対応するか、『冷静かつ沈着で、危機に際して動じないのは誰か』で決まるという。
デュヘイムは共和党全国委員会の政治部長も務めた。『どの陣営も不測の事態への備えはできていると考えたがる。だが最善の準備は、危機においても平静を保ち、冷静に対処することだ』と指摘した」

 00年のアル・ゴア、04年のジョン・ケリーと、2度の大統領選で上級顧問を務めた民主党のベテラン政治コンサルタント、ロバート・シュラムは、

「今回の選挙では、トランプは常に場当たり的で、ハリスは常に計算ずくで動いている。だから、今さらサプライズが起きるとは考えにくいとシュラムは言う。
今回、オクトーバー・サプライズが起きるとすれば、トランプよりもハリスへの影響が大きいだろうとみるのは、かつてブッシュ陣営の選挙参謀を務めていたスコット・ジェニングズだ。
『トランプに関しては、今さら有権者を「驚かせる」のは難しい。これ以上に何がある? 彼は起訴され、有罪判決も受けた。2回も暗殺されそうになった。既に大統領をやり、2度の弾劾も受けた。これ以上、何が影響を与えるというのか』とジェニングズは問う。
もちろん『ハリスには、まだ何かがあるかもしれない。しかし最も可能性の高いサプライズは、有権者の現政権への評価に悪影響を与えるような緊急事態が起きることだろう』。」