万が一、カナダ式のコンビニになれば、多くの日本人はファミマーかローソンに行ってしまうはずだ。

 何をそんなにセブン&アイは怖れているのか?

 セブン関係者はこう話す。

「井阪氏ら現経営陣は、祖業であるイトーヨーカ堂になかなか斬り込めなかったからです。創業者の(伊藤=筆者注)雅俊氏はスーパー事業に強い愛着を持っていた。そのため、過去八年間で八百億円もの赤字を垂れ流しているにもかかわらず、半ば放置しているような状態が続いていました」

 井阪体制は、創業家に配慮しすぎたため、舵取りがうまくいかなかったというのである。

 だがそのやり方は「物言う株主」たちには通用しなかった。

「HDの大株主だった米ファンド、バリューアクト・キャピタルはここ数年、コンビニ事業に経営資源を集中させるよう強く要求していました。
 追い込まれたHDは昨年三月九日、イトーヨーカ堂店舗の大幅削減などを盛り込んだ新たな経営計画を発表。自社が運営するアパレル事業からも撤退し、食品事業に注力する旨を発表したのです」(同)

 奇しくも、イトーヨーカ堂を一から作り上げた伊藤雅俊が98歳で亡くなったのは、発表の翌日だったという。

 今年の1月10日、イトーヨーカ堂では店長クラスの社員らを対象にした会議が開催されたそうだが、山本哲也社長から語られたのは、早期退職、つまりリストラだったと文春は報じている。

 この早期退職制度には正社員の約1割にあたる約700人が応募したそうだ。

 では、今後どう展開していくのだろう?

「ロータス投資研究所」の中西文行代表はこう解説する。

「セブン&アイHDの株主構成を見ると、海外法人等が約三六%。このうち一定数が『提案は企業価値からみても妥当』として臨時株主総会を招集すれば、大きく流れが変わる可能性もあります。
HDは稼ぎ頭だった海外コンビニの稼ぐ力も落ち込んでおり、足元の収益力も低下している。
 クシュタールとしては、ドル換算で買収価格が下がる円安のうちに株主提案まで持ち込みたいと見られます」