(本記事は、畠中雅子氏の著書『ラクに楽しくお金を貯めている私の「貯金簿」』ぱる出版、2018年6月22日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
【『ラクに楽しくお金を貯めている私の「貯金簿」』シリーズ】
(1)年金よりオトク?「財形貯蓄」の意外なメリット
(2)iDeCoを「やらなくて良い人も」居る?ふるさと納税もおさらいしよう
(3)頭金は「1割」で大丈夫 住宅ローンの「返済期間」が大事であるこれだけの理由
※以下、書籍より抜粋
家は結局賃貸とマイホーム、どちらが得なのか
持ち家か賃貸かは価値観によりますが、買うなら早いほうがよいです。
持ち家と賃貸、どちらが良いのかという正解はありません。
個人のし好でも変わりますし、価値観や家に求めるものでも違います。
ただこれだけはいえるのは、頭金が貯まるまで買わないというのはもったいないということです。
世間ではよく、「頭金は2割必要」というのですが、頭金1割の時点から、2割まで増やすのには時間がかかります。
頭金を2割に増やすのに多くの時間を費やすよりも、頭金が1割程度準備できた段階で家を買ってしまう。
その代わり、マイホームを取得した後は、どんどん繰り上げ返済をしていく。その方が結果的に、住宅ローンを早く完済できるケースが多いはずです。
例えば、頭金として使えるお金が1割ほど準備できているAさんとBさんがいたとします。
Aさんは5年掛けてもう1割、計2割貯めて家を買いました。Bさんは1割の段階で家を買い、購入から5年間は頭金として用意した1割分と同額を貯めて、そのお金を繰り上げ返済に充てました。
すると住宅ローンの完済時期はBさんのほうが約10年も早くなります。繰り上げ返済で早めに元本を減らした分、支払う利息も少なくなるというメリットも生まれます。
完済が早ければ早いほど、老後資金の貯蓄に早く着手できますし、健康を害して働けなくなったり金利が上がったりするリスクは少なくなります。
10年の差は非常に大きいのです。
頭金0というのは月々の返済負担が重くなりますし、そもそも頭金をまったく貯められない人がマイホームを購入するのはキケンです。
ですが、頭金として使えるお金が1割ほど貯められたのであれば、繰り上げ返済を前提にして早めに家を買ってしまったほうが、返済プラン全体で見ると、リスクが低くなるケースも多いのです。
さらに、返済期間を短くするローンの組み方を紹介します。
たいていの人は35年返済、ボーナス払いなしでローンを組みます。
しかしボーナスをもらっている人ならば、ボーナス払いを利用したほうが、結果的に支払う金額に大きな差がつきます。
目安としては、総返済額の1割をボーナス払いにします。ボーナス払いを利用している人は3~4割ほどボーナスから返済しようとするのが一般的ですが、それは多すぎますね。
例えば、3000万円を35年ローン、金利2%で借り、ボーナス払いなしにすると、毎月10万円弱の返済です。
しかし1割、つまり300万円のボーナス払いを組み込み、毎月の返済を3000円増やせば、ローンは29年で完済できます。
ボーナス時には6万8400円返すことになるので、年間では13万6800円をボーナスから支払います。
月々の返済額を増やした分と合わせて年間で17万円増えるだけで、ローン返済期間が6年も短くなるのです。
結果的に支払う金額は216万円も違ってきます。
ボーナス払いを利用しましょう、と提案すると「ボーナスが支給されなくなったときのリスクがある」と感じる人が多くいます。
しかし、総返済額に対して1割程度であれば、たとえボーナスがカットされても、やりくりでなんとかなるレベルではないでしょうか。
ローンの返済期間を6年短くできるということは、老後のリスク対策にも大きな効果を発揮してくれます。
例えば30代後半で35年ローンを組むと、完済時には70歳を超えてしまいますから、それまでに完済したいのであれば、ボーナス併用払いをしたほうがよいでしょう。
老後の1年というのはとても大きいです。
返済期間を27年程度まで短縮できれば、老後資金のプランニングはさらに楽になります。1年ずつ返済期間を短くしても、毎月の返済額は1年につき1000~3000円(金利や借入額による)しか変わりません。
その程度の負担ならば、家計にもそう響かないですよね。
不動産業者は月々の返済額が少ないほど、契約に移行するのが楽なので、35年ボーナスなし払いを選ばせようとするでしょう。
しかし、少しでも返済期間を短くすることを私は提案しています。
ボーナスのない人には、35年返済を1年短縮して34年返済にすることをすすめます。
その場合、毎月の返済は2000円程度しか変わりません。しかし、完済時期前後の60~70代は収入が限られているため、この時期における1年の差はとても大きいのです。
現役時代のような収入がなくなってしまうと、毎月9万円以上の返済の有無で生活の余裕は大きく違います。もし病気になったときにローンがあったら、治療費の負担を惜しむかもしれません。
私は、その人の年収でローンが組める最短の期間をいつも提案しています。
そうすると33年5ヵ月といった中途半端な年数(借り入れ当初は年単位が条件になるケースもある)になって金融機関は嫌がるのですが、本人のためを思えば、できるだけ短くしたほうがよいですね。
返済期間を長めにとって、繰り上げ返済をしようと考える人もいます。
ただ、この方法はいつもうまくいくとは限りません。少なくとも5回は繰り上げ返済をしようと意気込み、最初の2回ぐらいまではするものの、途中で計画が頓挫する人が非常に多いのです。
ローンの繰り上げ返済は100万円など、まとまった金額を用意して行うケースが多いです。
しかし、それだけの金額はそう簡単には用意できません。
繰り上げ返済が計画倒れになる理由で最も多いのは、車を買い替えたり、子供の教育資金が必要になったりするからです。
そうなってしまうのなら、最初から毎月の返済額を少しだけ増やして、1年でも2年でも、ローンの返済期間を短くしましょう。このように考えたほうが、確実にローンを早く完済できます。
また、35年というギリギリのプランを組むことは、もうひとつのリスクがあるのですが、あまり意識されていないようです。
一般的に、住宅ローンは35年より引き延ばすことはできません。
もしこれよりも返済期間を延ばす必要がある場合は、金融機関に救済措置を頼まないといけなくなるでしょう。
しかし、35年よりも短いプランを組んでおけば、自分の意志で35年までは返済期間を延長できます。
返済が滞りそうになったとき、条件変更をするだけで月々の返済額を減らすことができるので、何とかしのげる可能性もあると思います。
総返済期間を35年超に延ばそうとすると、銀行から許しを得なければなりません。許されないと最悪の場合、競売にかけられて家を手放さなければならなくなることがあります。
教育資金が必要な家庭だと、毎月1万円も貯蓄できないことも多いです。
そうすると、繰り上げ返済をする余裕もなかなか生まれません。しかし毎月の家計で数千円でも残るのだったら、その分をローン返済に少しでも回せるようにしたほうがいいと思います。
そうすることで毎月の返済額を少しずつ増やして、返済期間を短くすることを提案します。
とにかく早く返済できることを、何よりも意識しましょう。
畠中雅子(はたなか・まさこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)、FP技能士1級、マネーエッセイスト。新聞、雑誌、インターネットなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演、個人相談、金融機関へのアドバイザー業務、金融関連の調査業務、公的機関のアドバイザー業務なども行う大人気ファイナンシャルプランナー。 生活実感あふれるマネーアドバイスに定評がある。『貯金1000万円以下でも老後は暮らせる!』など著書多数。
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