資源とその周辺部には2000種以上の動植物が生息し、中にはタンチョウやキタサンショウウオなどの絶滅危惧種も含まれる。

 そんな自然の宝庫が今、太陽光発電の乱開発によって焼き尽くされる危険にあるというのである。

 釧路空港から車で東へおよそ40分。湿原の中を突っ切る「釧路湿原道路」を走っていると、おびただしい数の太陽光パネルが目に飛び込んでくる。驚くことに国立公園となっている湿原内でも、太陽光発電の開発が行われているというのだ。

 約1.5キロメートルにわたり続くパネルは、「すずらん釧路町太陽光発電所」と「釧路町トリトウシ原野太陽光発電所」のもので、230万平方メートル(東京ドーム49個分)の土地に37万枚が並べてあるという。釧路市内でも、そこかしこでこうした光景が見られるというのである。

 釧路市の職員がこう明かしている。

「市内にあるメガソーラー(発電容量1メガワット超)は22カ所。小規模なものを含めると、正直、どの程度あるのか把握しきれません。太陽光パネルを作りたいとの問い合わせは、昨年度だけで数百件あり、今年はさらに増えている。その中には、外資も数多く含まれています。
国の特別天然記念物のタンチョウの営巣地と、市の天然記念物キタサンショウウオの生息地も太陽光で潰されています。現在、市に紹介のあった太陽光の計画地の中で、約1000万平方メートルがキタサンショウウオの生息地と重なるのです」

 開発によって、災害リスクも高まるとして、今年5月には地元住民が2万人の署名と計画中止を求める要望書を市長に提出した。音別町で歯科医院を経営する村上有二は、こう怒りを露わにする。

「日本海溝・千島海溝沿いの地震の想定津波高は20メートルを超えますが、メガソーラーの計画場所は、津波災害警戒区域なのです。もし津波が起きてパネルが湿原に散乱すれば、回収はほぼ不可能だし、パネルから火災が起きた場合には消防のアクセス道路がありません。大雨時の増水で湿原の中を走る。JR根室線が脱線する危険性もあります。
しかし開発を進める外資系企業は、メガソーラーを投機対象としてしか考えておらず、さまざまなリスクを考慮していない。しかも、そうして、発電された電気を使うのは、都市部の人たちなのです」