◆フレームの内と外

 第24週第144回、家庭裁判所発足から20年が経ち、寅子が東京家庭裁判所少年部部長に、ライアンこと久藤頼安(沢村一樹)が所長になる。発足時、家庭裁判所の父と称される愛の人・多岐川幸四郎(滝藤賢一)が飾った一枚の絵が、同裁判所内にまだ飾られている。

 絵を描いたのは、花岡の妻。寅子からもらったチョコレートを持ち帰り、子どもたちにわけてあげる手元の様子が、温かなタッチでかっ写されている。第144回以降、たびたびこの絵が写され、見るたびに花岡のことを思い出す。

 いや、岩田が残した表情の豊かさによって、フレーム外の存在であるはずの花岡が語りかけてきてフレーム内に今でも感じ続けられる。しかも絵という一枚の枠が画面内にもうひとつのフレームを作っている。本作だけでなく、奈緒主演の不倫ドラマ『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ、2023年)でも冷蔵庫をのぞいて痛切な表情をする岩田が、冷蔵庫の枠で縁取られるように捉えられていた。

 あるいは演技以外でも、今年の『24時間テレビ47』(日本テレビ、8月31日、9月1日放送)のチャリティー企画「三代目・岩田剛典が挑む 生アート制作 一流画家の作品をオークション」で、ライブペイントに挑戦した岩田の作品が、テレビ画面内でフレーム内フレームになっていた。家庭裁判所に飾られた一枚は、岩田が演じる花岡作でないにしろ、岩田剛典がフレームの内と外を自在につなぐことで、本作の映像的価値を高めていた。

<文/加賀谷健>