『虎に翼』(NHK総合)が、後半部へ向けてそろそろ折り返そうというところで、判事・花岡悟が餓死して画面上から退出することになった。
にもかかわらず、最終回が近づくにつれ、花岡の存在が画面外から強く語りかけてくるように感じた。役柄を完全につかんだ岩田剛典が演じるからなのか。これはいったい、どういうことだったのか?
イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、フレームの内と外をつなぐ岩田剛典について解説する。
◆信念の人たちの決定的違い
『虎に翼』に登場するふたりの判事、桂場等一郎(松山ケンイチ)と花岡悟(岩田剛典)は、どちらも決してブレない信念の人たちである。戦後、前者は最高裁判所第5代長官となり、後者は食糧管理法の担当判事になった。
司法の独立をなんとしても守ろうと身を粉にする桂場と、闇市を取り締まる立場としてヤミ米を買わなかった花岡。どちらも凄まじい熱量だが、でも決定的な違いがある。それは、食べるか、食べないかだ。
「食べないとやっていけないですし、花岡は『法がそうなっているから』というので餓死してしまった」
『モデルプレス』のインタビューで、桂場役の松山ケンイチがそう言っている。甘いものが好物である桂場は、甘味処「竹もと」に足しげく通い、大好きなあんこ団子を食べた。一方、花岡は配給以外の食糧を手に入れることを頑なに拒み、第10週第50回で極度の栄養失調から餓死した。
◆アメリカ映画的なキャラクターを演じる意味
どうしてそんなに頑ななのか。いくら生真面目な人だからといって、自分の生命を危険にさらすのは、ちょっと度が過ぎている。でも、どこまでも信念に忠実であろうとする花岡は、忠実であるがために花岡たり得る。そしてそのために本作の中盤で画面上から退出することになった。