そして、僕を含めて、その中間に位置する団塊ジュニアや氷河期世代は、上の世代から男らしさの教育を受けて育ったものの、価値観が移行する狭間に当たって、表向きは順応しようと努力していても、内心では苦しんでいる世代です。

 結局のところ、何が『男らしさ』とされるかは、その時代や社会によって異なるし、そこに馴染めなければ生きづらさに苦しめられてしまう。社会全体がそうした被害を生んでいる以上、いっそ男性のナイーブな感情が抑圧されてきたことを認めてくれたら、“男らしさ”に苦しんでいる人も少しは減ると思うけど、なかなかそれも難しい。

 でも、一個人の思いとして、子供の頃から感情を抑圧されてきたことについては、社会の責任もあるよなって思いながら生きてもいいんじゃないかなと。これまでの社会から『男は強くないといけない』という価値観を押しつけられてきたことに対して、中年の男性はもう少し怒っても良いんじゃないかと思っています」

白岩玄
白岩玄氏 撮影/山田秀隆
【白岩玄氏プロフィール】

作家。1983 年、京都市生まれ。2004 年『野ブタ。をプロデュース』(河出書房新社)で第 41 回文藝賞を受賞しデビュー。同作は第 132 回芥川賞候補作となり、テレビドラマ化される。ほかの著書に、男性の生きづらさを描いた『たてがみを捨てたライオンたち』(集英社)などがある

<取材・文/谷口伸二 画像/Adobe Stock>