第1話で、松本香(ゆりやん)は同期入門の長与千種(唐田)と仲良くなる。のちにライオネス飛鳥に改名する同期の北村智子(剛力)は身体能力に優れ、先輩たちに気に入られているのに対し、2人は落ちこぼれだった。長与は親が借金を背負ったために、親戚の家に預けられ、たらい回しにされたという境遇もあり、松本とは似たもの同士だった。

 だがその後、長与はライオネス飛鳥とタッグを組み、クラッシュギャルズを結成したことから爆発的な人気を得る。かつては親友だったはずの長与と松本の間に、大きな隔たりが生じていく。

 物語が俄然盛り上がるのは、第2話からだ。当時の全日本女子プロレスは一時代を築いたビューティペアブームが去り、会場は閑古鳥状態だった。実力ナンバーワンのジャガー横田(水野絵梨奈)やヒールのトップに立つデビル雅美(根矢涼香)では、お客を呼べずにいた。

 そんな中、いつまでも芽の出ない長与は、シングル対決が決まった同期の飛鳥に対し、今の女子プロレスに対する不満をぶつけるべく、ガチな試合を申し出る。飛鳥もこれに同意。2人の女子レスラーの魂と魂が、リング上でスパークする。お互いが闘志をむき出しにした熱戦だった。この一戦がきっかけで、女子プロレス界に革命をもたらすクラッシュギャルズが爆誕する。

 長与と飛鳥がシングルで激突したこの試合を、唐田と剛力は体を張って再現してみせた。唐田は長与が得意技としたローリングソバットを、剛力はジャイアントスイングをお互いに見舞う。基本、ドラマや映画で俳優同士がぶつかり合うことは非常に稀だ。相手に怪我を負わせたら大問題になる。普段から鍛えているスタントパフォーマーを相手にすることが多い。それだけに、唐田と剛力がぶつかり合うこのシーンは大いに盛り上がる。カメラも長回しで、2人を懸命に追っている。

 女優として再起を狙う唐田と剛力の情念が、レスラー生命を賭ける長与と飛鳥との真剣勝負と重なり合う。唐田と剛力が汗まみれで組み合う姿は、官能的でもある。ドキドキさせる。『極悪女王』屈指の名場面だろう。この好カードは、第4話でもう一度再戦されることになる。