58年前の1966年、静岡市で一家4人が殺害されたいわゆる“袴田事件”。死刑が確定した袴田巖さんの再審判決公判で静岡地裁は9月26日、袴田さんに無罪判決を言い渡した。

 再審で最大の争点となったのは、事件から1年2か月後にみそタンク内から見つかった「赤い血痕」がついた「5点の衣類」。弁護側はこれまで「長期間のみそ漬けによって化学反応が起こり、赤みは消えるはず」「捜査機関によってねつ造されたものだ」と主張していたが、静岡地裁はこの件を含む3つのねつ造を判決で認定した。

 これを受け、当然ながらネット上では検察や警察などへの怒りの声が噴出しているが、一方で袴田事件を記録した過去の書籍や劇場作品などへの関心も高まっている様子。そこで、2010年に公開された映画『BOX 袴田事件 命とは』でメガホンを取り、脚本も担当した高橋伴明監督のインタビューを再掲する。

※以下、2010年5月25日掲載記事の再掲です。

担当判事が冤罪を訴える”袴田事件” 映画『BOX』は司法判決を覆せるか?

袴田巌さんに無罪判決…新井浩文が演じた映画『BOX 袴田事件 命とは』に再注目の画像2常に時代に向き合った作品を撮り続ける高橋伴明監督。
最新作『BOX』は現在も係争中の”袴田事件”、
そして裁判員制度の是非を問い掛ける問題作だ。
「裁判員は一審しか参加しないから責任が軽いという考えは大きな間違い。
事件から間のない一審がいちばん重要なんです」と真摯に語る。

 朴訥なひとりの男が、元プロボクサーという理由で殺人事件の容疑者となった。警察と検察による長時間に及ぶ取り調べの結果、男は容疑を認めるが、裁判に入ると一転して無罪を主張。自白以外に決め手がなく、裁判が長引く中、一度捜査している場所から1年後に有力な手掛かりが忽然と現われた。あまりにも怪しい新証拠。しかし、裁判の判決は、有罪そして死刑宣告。男は高等裁判所、最高裁判所へと控訴するも、ことごとく却下され、死刑が確定した。これが1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で起きた一家4人刺殺放火事件「袴田事件」のあらましだ。これはフィクションではなく、現実の事件である。