「ひとりで生んでなかったら、津野さんとも会えてないですもの」なんて水季が意味深に言ったあと、「違いますよ」と期待させないようなことを付け加え「違うんだ」と拍子抜けする津野。こんな思い出が津野にはあった。これかなり仲良いなあと思うし、秘密の思い出として残っていくのだと思う。
夏の部屋に残った大和は弥生に「当分ないと思いますけど彼女できたら教えますね」と言い弥生は「お願いします」と返す。夏と弥生、すぐ元サヤに戻りそうだと思いきや、そうでもなさそうな雰囲気。
でも、はじめて夏の部屋に泊まったときのことを弥生は思い出す。帰りにばったり夏と会い、送ってもらう。はっきりしない関係性は、「はいかいいえで答えられることなんてない」という弥生のセリフに集約される。
津野と水季も弥生と夏も、海のはじまりが曖昧なように、波と砂が溶け合いにじみ合い、近づいたり離れたり、やさしくなったりいじわるしたり、心は定まらない。
◆愛ゆえに、最も関係の深い夏に意地悪が発動してしまう
朱音もまた夏に対して、波のように接していく。
「娘が自分より先に死ぬこと想像してみて。わたしたちはね娘の遺影の写真を選んだの。それがどんなにつらいか、いまならわかってくれるかなって言いました」と重たいことを突きつけて「意地悪ばっかり言ってごめんなさい」と悪びれない。
津野と朱音の意地悪さをここで回収し、意地悪な人も海を、水季を愛しているのだと、いや、愛ゆえに、最も水季と海と関係の深い夏に意地悪が発動してしまうのだ、仕方ない。海と水季を愛する者たちが集まって、助け合う世界への希求が、水季の手紙で綴られる。
水季の手紙には、子どもに「選択肢をあげること」と書いてある。
第1話で、水季は、海と海(sea)に行き、「いるよ。いるから大丈夫。行きたいほうへ行きな」と海を自由に歩かせた。夏も、海の背中を見守り、好きなところに自由に行かせようとする。