このハッピー・ハードコアはハイパーポップのルーツのひとつに数えられる場合もあり、そのためかやはり2020年前後から再び注目を集めている様子だが、要するに、「Underground」は“ただ懐かしいパラパラ系のサウンドを引っ張ってきた”といったアプローチではなく、“2024年にアツい”ダンスミュージックを目指したうえで生まれたものだろうということだ。ちなみに、9月10日にリリースされたリミックス集の中には、原曲よりさらにハッピー・ハードコアやユーロビートに寄った(揺り戻した)リミックスもある。
また、とくにサビにおける機械的な歌い方やメロディなどは、ボーカロイド文化からの影響も感じられる。かつては中田ヤスタカのユニット=CAPSULEにハマるなどJ-POPにも造詣のあるブラッドポップだけに、ボカロは当然把握しているのではないだろうか。実際に初音ミクに「Underground」を歌わせるカバー動画なども登場しているが、違和感のない仕上がりだ。
千葉雄喜にNewJeans…広がる日本語歌詞の可能性
ボカロから影響を受けているのだとしたら当然ではあるが、「Lettuce」では英語詞中心だったのが、「Underground」ではほぼ日本語詞となっていることも重要なポイントだ。
いま、日本語詞でグローバルヒットを狙える可能性が注目されている。米人気ラッパーのメーガン・ザ・スタリオンは今年6月に発売した最新作に収録した「Mamushi」にKOHH改め千葉雄喜をゲストに迎えたが、日本人プロデューサーのKoshyが単独で手がけた同曲は日本語をフィーチャー。千葉のパートだけでなく、フック部分でメーガンが「お金稼ぐ 私はスター♪」と歌う同曲は全米チャートトップ40にランクインし、ニュージーランド、マレーシアなどではトップ10入りするなどグローバルヒットとなっているのだ。
近年はアニメ人気の恩恵を受ける形で米津玄師「KICK BACK」やYOASOBI「アイドル」などのタイアップ曲が海外でヒットする例があるが、「Mamushi」はそれとは別ルートでの“日本語ヒット”の可能性を示唆する成功例と言える。なにせ、先日ニューヨークで開催された音楽の祭典「2024 MTV Video Music Awards」でもメーガンは千葉雄喜を招いて「Mamushi」を披露。日本人ラッパーがアメリカの音楽業界が注目する一大ステージで(メーガンとともに)日本語でラップするという事態にまで及んでいるのだから。