ちなみに「車」というキーワードでは、ビジュアライザーの映像の終盤 は、日産・フェアレディZ風のデザインのCGカーがドリフトする様子がループするものになっており、名作マンガ&アニメ『頭文字(イニシャル)D』を想起させる。こちらもまた、アジアや欧米で人気のある日本コンテンツだ。
令和の「木村拓哉がパラパラを踊る動画」バズと、「Y2K」トレンド
パラパラもたびたびリバイバルの波が起こるが、2021年の初め、あるパラパラ映像が海外でバズっている。木村拓哉が『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)で「バッキー木村」というギャル男ふうのキャラクターに扮してパラパラを踊っていた過去映像が英語圏ユーザーと思しきアカウントから投稿され、5万リポスト、17万いいねを稼ぐ反響を起こしたのだ。激しいユーロビートサウンドに反し、無表情で踊るシュールな光景がウケたとみられる。このバズの件を意識したかは定かではないが、この振り付けを取り入れた背景には、パラパラが日本発祥のダンスであることが影響しているのは間違いないだろう。
パラパラは90年代末に隆盛を極め、バッキー木村のコントも00年代初頭。まさに近年のトレンドである「Y2K」カルチャーのひとつだ。ミュージックビデオに登場するファッションも、(セクシーなのオフィスファッションを経て)Y2K的なストリートスタイル。当時のギャルファッションもミックスされており、Y2Kトレンドにうまくアプローチしている。
f5ve「Underground」は177 BPM(Beats Per Minute=テンポの速さを表す)という超ハイスピードなダンストラックだが、音楽的にもやはり「Y2K」――90年代後半に流行した「ハッピー・ハードコア」を彷彿とさせる。
ハッピー・ハードコアは近年リバイバルが指摘されるレイヴ・ミュージックの派生ジャンルのひとつで、160 BPM以上の高速ビートと、「レイヴスタブ」と呼ばれる象徴的なシンセの音色などが特徴。ユーロビートやトランスとも隣り合う多幸感あるハイスピードなダンスサウンドを、2020年前後からメインストリームで存在感を放つなど今のトレンドのひとつ=「ハイパーポップ」のフィルターを通して現代的に再解釈したような曲が「Underground」なのだ(ミュージックビデオの地下のクラブシーンはレイヴ・パーティを意識したものだろう)。