◆15歳~39歳のがんの研究で、見えてきた問題とは

――AYA世代のがん患者の問題は、なぜ注目されるようになったのでしょうか?

清水千佳子先生(以下、清水):AYA世代は15歳~39歳までとされていますが、海外ではこの世代のがんが、15歳未満の小児のがん、40歳以上のがんと比べて生存率の改善が鈍いという統計が出て、注目されるようになりました。

国内では、15歳未満の小児期にがんを発症したがんは小児科医、AYA世代に発症した場合は主に成人の臓器別の専門の医師が治療しており、それぞれの領域で患者さんが抱えている問題は認識されてきました。しかし、医療者が自分の診ている患者さんだけをイメージしていると、他のAYA世代の患者さんの問題を見逃してしまうのですよね。

清水千佳子先生の写真
清水千佳子先生
――AYA世代び抱える問題を、まとめて捉える機会がなかなかなかったのですね。

清水:2016年に国が行ったAYA世代がんの研究事業に、小児科の領域や、我々のような成人がんの専門医、また生殖医療の領域からも医師が参加しました。その時に行った調査で、AYA世代の患者さんが非常に多様でそれぞれの悩みが多面的であること、そして医療従事者も、AYA世代の患者さんが少ないために情報がなく、対応に困っていることが分かってきました。

そこで、2018年に実態調査を行った研究班のメンバーを中心に、AYA世代のがんの医療と支援を向上させていくための団体、一般社団法人「AYAがんの医療と支援のあり方研究会(AYA研)」を設立し、活動を始めています。