◆家庭を持った今、死ねない理由が強烈にある
――10年越しで動いてきた映画が公開になったわけですが、10代の頃の自分が今の松山さんを見たら、驚くでしょうか。
松山「考えられないです。当時はとにかく目の前のことに精一杯でしたから。今だって、これから先どうなるか分からないし、どんな出会いが待っているか分からないですけど、でも終活だけはしておこうと。実際やっていますけど、この作品でさらに強まりました。今、死ねないからこそ」
――「今、死ねないからこそ」、死を意識すると。
松山「はい。『今、死ねない』というのは、結婚してはっきり思うようになったことです。それ以前は、何のために生きているのか、そこへの強烈な意志みたいなものがなかったんです。『自分はなぜ生きなきゃいけないのかな、死ねないのかな』ということに、明確な答えが出せなかった。でも今ははっきりと、『子どもを自立させなきゃいけないから、今は死ねない』と思える。死ねない理由が強烈にあるんです。そこは大きな違いですね」
(C) 2023「ロストケア」製作委員会
<撮影・文/望月ふみ>
【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi