きっかけは『誰も知らない明石家さんま』(日本テレビ、2020年放送)に出演したことだった。番組の主旨は、MC明石家さんまが画商に扮して一般公募した作家たちを発掘し、その作品の買い手を「明石家画廊」で見つけるというもの。岩田の作品もこの機会にテレビで初公開された。

 カンバスに描き込まれ、立ち上がる岩田の作品は、細密画のように繊細で、彼の画家としての才能をひと目で理解させる一級品だった。監修として出演する画商からは「名前を隠しても100万円で売れる」とお墨付き。

 三足の草鞋に画家という肩書きもここで追加してしまう。他のアーティスト活動同様に、絵画世界にも興味の赴くままに触手を伸ばしてみたら、自然と作品化してしまったみたいな。そういう軽妙さと肩肘はらない制作態度。岩田剛典にとっての絵画とは、好きと努力を超越した先にある自由な空間そのものではないかと思う。

◆作品間の豊かな類似と未来図

 制作期間は2か月。その間、筆をタッチしていくカンバスとひとり向き合う中で何を思い、見たのか。誤解を恐れずにいえば、彼自身の未来図を無意識的に垣間見ていたんじゃないかな(実際、こうして24時間テレビの帯企画につながっているのだから)。

 幻想的な図像が配置される作品世界は、わいてくるイメージを自由に連想して具現化したもの。イメージの連鎖を自由に筆記するスタイルは、どこかシュールレアリスム的でもある。本人にとっては自分を改めて知る作業としてあり、岩田剛典というひとりの人間の脳内イメージを開示する手続きみたいなものかもしれない。

 三代目JSB再始動の2023年にリリースされた「この宇宙の片隅で」のミュージックビデオで、大きなカンバスを前にした岩田の姿はそこからグループ全体とソロの未来を見つめるような眼差しで、あまりに象徴的だった。

 完成したカンバスの現実は、描き手である岩田から見た鏡みたいなものでもある。そう、鏡。明石家さんまとの縁を辿ると、2023年放送の『誰も知らない明石家さんま』内の再現ドラマ「笑いに魂を売った男たち」で岩田が8人目のさんま俳優を演じたとき、楽屋の鏡に繊細で控えめな表情が映る印象的な場面があった。