人気ブランド化した組織としての宿命でしょうか。単純に子どもたちが楽しむ冒険ファンタジーとして『天空の城ラピュタ』や『となりのトトロ』を制作していた頃のスタジオジブリとは異なり、大企業たちを相手にしたパワーバランスの中でスタジオジブリは走るようになっていきます。巨大スタジオを設立するなど栄華を極めたスタジオジブリですが、気づいたときには後継者は誰もおらず、日本テレビホールディングスの子会社として存続することになったのです。
宮崎監督自身が「飛行石」となり、かつてのスタジオジブリはまさに天空に浮かぶラピュタのような凄まじいパワーと影響力を放っていました。しかし、昨年公開された宮崎監督の自伝的アニメ『君たちはどう生きるか』(23年)を観て、スタジオジブリは一時代を終えたことを痛感したファンも多かったはずです。
シータとパズーが口をそろえて叫ぶ「バルス!」は、滅びの呪文です。今夜の『天空の城ラピュタ』で唱える「バルス!」には、これまでとは違う苦味とせつなさが感じられるのではないでしょうか。