◆「お前のせいで俺がつらい、みたいな顔しないでよ!」
体力のない莉子さんのため、結婚当初から一緒にはじめていた趣味のランニングでも、姫気質は爆発した。
「車でちょっと遠出して、海岸沿いの気持ちいいランニングポイントに行ったんです。莉子の希望で。ところが海風がベタベタするうえに春にしては結構気温が高く、莉子が途中でへばってしまったんです」
道にへたり込んだ莉子さんの表情はみるみる“怒り”へと代わり、「もう疲れた!」「暑い!」を大声で連発。
「どうしたって車のある場所までは戻らなきゃいけないので、なだめながら手を引こうとするんですけど、僕の手を振り払って、てこでも動かない。最終的には『もういやだーーー!』って泣きじゃくる」
大声でわめく莉子さんを前に、動悸と吐き気が止まらなくなった園田さん。すると、莉子さんが追い打ちをかけるように言った。
「何? お前のせいで俺がつらい、みたいな顔しないでよ!」
◆薬の力を使って抱く
夫婦間のセックスは減っていった。
「ヒステリーを起こした莉子に、性的な魅力を一切感じられなくなりました。泣きわめき、物を投げては壊すような人に興奮なんてするわけがない」
園田さんから誘うことは皆無となり、莉子さんからの誘いも園田さんは何かと理由をつけて断るようになった。
「当然、莉子は『私に女性としての魅力がなくなったの?』と不満げに言ってきました。まさか自分のヒステリーが原因だなんて彼女は思ってないし、僕も絶対に言わない。言えばまたヒステリーになりますから」
しかし、このまま拒否し続けていれば、いずれ莉子さんは不満を爆発させ、結局はヒステリーを起こす。園田さんは“薬の力”を借りた。
「いわゆるバイアグラ的な、勃起不全用の薬を飲みました。飲んでもこの程度か、というくらいの効果でしたが。とにかく、数ヶ月に1度の“おつとめ”はそれで乗り切りました」
園田さんは、あらゆることが「莉子さんの望み通り」になるよう知恵を絞り、工夫を重ね、配慮を施した。その甲斐あって莉子さんのメンタルは安少しずつ安定していったが、その状態をキープするには日々の工夫や配慮をやめるわけにはいかない。園田さん自身もそれをよくわかっていた。
園田さんの会社のCEOの言葉「とにかく仕事ができる男」が思い出される。さぞかし完璧に、莉子さんの“介抱”を行っていたのだろう。抜けも漏れもない、完璧な仕事だ。