◆「妻の顔色だけをうかがって生きる」と決意

 母親のヒステリーも相変わらず。両親がいつ爆発するかもしれない恐怖に園田少年はいつも怯えていた。

「だから僕、周囲の大人の顔色を常にうかがう子供でした」

 女性のヒステリーに対する尋常でない恐怖心と、人の顔色を常にうかがう癖。このふたつの資質が、園田さんを長い長い地獄に引きずり込んでゆく。

「莉子が初めてヒステリーを起こしたあの日から、彼女が二度とヒステリーを起こさないためにはどうすればいいかだけを考えるようになりました。莉子が平穏な心で毎日を過ごせるように、僕が全力で環境を整えねばと」

 園田さんは、莉子さんの顔色だけをうかがって生きていくことを決意し、それを完璧に実行する。二度と、あのような怖い思いをしないために。

◆生活費も家事もほぼ全負担

 園田さんは、それまで莉子さんが2割程度負担していた生活費を、ほぼ全額負担することに決めた。

「莉子はいつも自由になるお金が少ないと僕に不満をぶつけていました。不満が蓄積すれば、いずれは爆発するでしょう。そういう危険を根本から絶つには、僕が全部出したほうがいいなと」

 結果、莉子さんの稼ぎはすべて莉子さんの遊興費と貯蓄に充てられるようになった。

 さらに、園田さんが8割がた担当していた家事も、100%担当することにした。そうすれば、家事分担の比率で言い合いになることはない。

「莉子は箱入り娘で一人暮らし経験がなく、結婚当初は掃除も洗濯も料理もまったくできない子でした。だから半分とは言わないけど、身の回りのことくらいはできるようになろうよと説得して、結婚後に少しずつ家事を教えたんです。ただ、うまくできなくてイライラすることも多くて。いつ爆発するかもわからない不安に僕がかられるくらいなら、いっそ全部やってしまおうと」