◆まずはがんを恐れず、正しい知識を持って

――Aさんのように、若い年代は健康診断を受けない人が多いのでしょうか?

清水:AYA世代は学生や社会人、子育て中の方など、皆さん忙しい日常を送っているので健康のことが二の次になってしまうことが少なくないと思います。学生さんなど、体調が悪くても1人で病院に行かずになんとかしのごうという人もいるかもしれません。

そういったことは医療者からは見えにくいので、Aさんのようながんを経験した方のお話の中から教えてもらうことはすごく多いのです。そこをしっかりと聞き取りしないと、AYA世代の患者さんのケアを充実させられないと考えています。

講義を受ける大学生
――今がんになっていないAYA世代の人は、どんなことをしておいた方がいいのでしょうか。

清水:若くしてがんを発症することは、とても特殊なことのように感じるかもしれません。しかし、がんは日本人の2人に1人が発症するとても一般的な病気です。若いがん患者さんは、たまたま人より早くなってしまったという状況なのです。

がんに対して怖いイメージを持っているかもしれないですが、今はがんの診断や治療が進歩しており、予後はよくなっています。しっかりと調べてみると元々持っていた印象が変わるかもしれません。まずはがんを恐れず、正しい知識を持つことが大切です。

――すでにがんを発症している方々に向けて、メッセージをお願いします。

清水:AYA世代の患者さんは少ないので、患者さんにとって必要な支援を作っていくためにも、皆さんと一緒に声を上げていけたらいいなと考えています。今の若い人は、SNSで情報収集をすることが当たり前になっていたり、生活様式がどんどん変わっていっています。頭の固い医療者が考えたものではなく、AYA世代の実態に合った支援をするためにも若い人たちの意見は大切です。もちろん体調が落ち着いた時に、少しだけ私達に知恵を貸していただけたらありがたいです。

【清水千佳子先生】

国立国際医療研究センター病院 乳腺・腫瘍内科診療科長。東京医科歯科大学医学部医学科卒業。国立がん研究センター中央病院での研修、米国のM.D.Anderson Cancer Center Medical Exchange Program短期留学を経て、同病院の医員、医長として勤務。平成29年10月より現職。専門は乳癌の薬物療法。AYAがんの医療と支援のあり方研究会 理事長のほか、日本乳癌学会評議員、日本臨床腫瘍学会協議員、日本がん・生殖医療学会理事などを務める。

<取材・文/都田ミツコ>

【都田ミツコ】

ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。