“結婚した”と言うだけで、私の見え方が変わってしまうのであれば、もしも女優として“じゃあ、もうこういう役しかできないね”みたいにされるのなら、リスクのほうが大きいなと思って公表しなかったんです」

◆古い考え方は年齢や性別に限らず“言語”として受け継がれている

内田慈(うちだ ちか)さん
――いまは。

内田「いまはもうそれこそ私の日常になりました。隠さないことが今の私のナチュラルになったので口にできます。ただ結婚した直後の、私のトピックになってしまう間は言いたくありませんでした」

――それにしても、「女性の幸せは、結婚して、子どもを生んでナンボ」だなんて本当に言われるんですね。

内田「言ったのは同世代の女性だったんです。彼女にとっての結婚観はそれでいいと思うし、色んな価値観があっていい。でも、絶対にそれを押し付けられたくは無いなと思ったんです」

内田慈
――ちょっと聞きづらい内容でもありますが、それこそ映画などの現場は考え方が古い人も多いと聞きます。

内田「いまはリスペクトトレーニングやハラスメント講習といったことを事前に受けることが、映像でも舞台でもかなり当たり前になってきました。

面白い表現を生むためにはもちろん一筋縄(ひとすじなわ)ではいかないことも沢山あります。そこへハラスメントの指導が入ることに対して、過渡期には“そんなんじゃ何もできないじゃないか”みたいな声も聞こえることがありましたが、そこの全体の認識がいっときより出来てきた気がします。

ただ性別や年齢の問題ではなく、“言語”として受け継がれてしまっているものはまだあると思います」

◆セクハラを相談したら「女優はモテてナンボだから頑張れ」

――過去には女性であることで大変な思いを感じたこともありましたか?

内田「たくさんありました。たぶん弱い存在だと思われているから、単純に怒鳴ったりしやすいとか、みんなで飲み屋に行っても、お茶くみじゃないけど、当たり前に、お酒を作る係や注文を取る係を回されているとか。