―連載「沼の話を聞いてみた」―

未就学児に知識や技術を習得させる「早期教育」。気軽なお稽古(けいこ)感覚のものから、後の進学や受験を見据えた気合の入ったものまでと幅広くあるが、当連載のテーマは「沼」なので、今回の体験談は後者である。

現在50代の歩(あゆみ・仮名)さんが早期教育として某知育教室に熱を入れていたのは、すでに成人している息子の幼稚園時代なので、いまから20年ちょっと前。

知育教室沼202307①
※写真はイメージです(以下同)
その教室は教育熱心な母親たちのあいだで口コミで広まり「知る人ぞ知る有名な存在」だったという。

「あの教室で出会った母親たちの、切迫した熱意。いまでもリアルに思い出されます。教室に時間をとられて生活が荒れていくのに、いまやらないと周りから遅れをとるのでは……と焦る気持ちも」

ドラマ化された漫画『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』(高瀬志帆著・小学館)では、中学受験を「父の“経済力”と母の“狂気”」と説明するセリフに注目が集まったが、歩さんの話に出てくる教室のママ友たちも、まさにそんな感じであった。