◆講師が語る、数々の「奇跡」

「参加者の不調語りがひととおり終わると、講師がおもむろに自分の話をはじめます。激務でくたびれ果てた毎日の末、大病を患ったが手術後に奇跡の妊娠。出産後はひと息つく暇なく、子どもの夜泣きに振り回される日々。そして発症した子どもの化学物質過敏症。

自分も体調不良が重なり、試行錯誤の毎日……。そこで出会ったのがこのアロマ! アロマの助けで化学物質と添加物を取り除いたら、不調が改善されて、人生変わった! そしていかにその商品が素晴らしいか、を延々と聞かされました」

マルチオイルとワーママ202406
こうした体験談は、マルチ商法にかぎらず、健康器具や健康食品販売でも定番だろう。

さらに講師は「家族の健康に大切な話」と幾度も強調しながら、農薬と添加物の怖さを解説しはじめた。

この界隈では「植物から抽出した精油(アロマオイル)は自然で安全」と考えるので、一般には安全性が確認されている農薬も添加物も、過剰に嫌う傾向がある。

嫌うというよりも、それらを悪者にすることで商品の優位性を高める、というべきか。

「アロマでハンドクリームを作るクラフトワークは実質30分くらい。残り1時間半近くのほとんどは、商品がいかに素晴らしいかの演説でした。

『お下がりは市販の柔軟剤が使われているから、子どもに着せると一気にアトピーが悪化する。だからアロマで手作り柔軟剤を作っている。子どもが興奮して寝てくれない? このアロマを使うと一発で静かになりますよ! 発熱時はこれを塗ると2日で熱が下がる!』 ……私には、共感しにくい話がたくさんでした」

マルチオイルとワーママ202406
パワフルな子どもらが、一発で静かになるアロマ。その話が本当なら、逆にコワいと思うのは筆者だけではないだろう。子どもの発熱は、何も塗らなくても2日経てば下がるケースが多そうだが。