▲出汁の風味が余韻を残す「椀物 白羽」

竹筒には川魚がのっています。信州で親しまれている鯉は、刺身と巻き寿司が用意され、歯ごたえのあるさっぱりとした味でした。うちわをかたどった器は海の魚で、マグロとメイチダイのお造りが並びます。さらに桂の葉の下に雲丹が隠れていて、造り醤油と酢橘を絞ったポン酢でいただきました。

▲「向附 彩山野海魚」は川と海で獲れたお造り

驚きの料理は「勧進帳 山渓」と名付けられた “変わり鍋” でいただくしゃぶしゃぶです。長野の夏をイメージした鍋は、緑豊かなマイクロハーブの山々と、出汁を泡立てた夏雲です。野菜もたっぷりくわわり、洋風な味付けの出汁の味がとても美味しかったです。

▲変わり鍋「強肴 勧進帳 山渓」。マイクロハーブの山と、出汁を泡立てた夏の雲

出汁にはトマトや隠し味の赤ワインが加わり、コンソメを思わせる味わい。角切りの生姜もあしらわれ、さっぱりとしたアクセントになっています。しゃぶしゃぶした牛肉に、辛子味噌をつけると味の変化も楽しめます。

▲鍋に火が通ると雲が晴れて食べごろに。お肉がとっても柔らかでした

初めに供されることが多い「八寸」は、コース料理のほぼ真ん中で登場。そのうえ牛肉料理の直後に運ばれるため、第二章が始まったように感じられる構成でした。ケシの実を散らして焼いた鹿肉の松風や、川海老、フルーツ鬼灯(ほおずき)、トウモロコシのお豆腐はひげも使って丸ごと楽しめるなど、目にも鮮やか、味も多彩なひと口料理が並びます。

▲目にも楽しい「八寸 夏逢の粋」

八寸にあった「鮑隠元胡麻肝和え」は、鮑とインゲンをたっぷりの白ごまで和えた一品。酢でさっぱりと仕上げられています。

▲八寸のひとつ「鮑隠元胡麻肝和え」

メインディッシュは、肉料理と魚料理のどちらかを選びます。「牛の炭火焼」は、大皿に飾られた緑豊かな笹の葉に驚かされました。牛肉の炭火焼きは、カツオと昆布で味をつけた味噌だまりにつけていただきます。牛肉はとっても柔らかく、肉汁が口の中に広がる感動の味でした。