◆結婚、子育て……周囲と自分を比べなくなった

丹波山村坂本
丹波山村の特産品・原木舞茸を片手に
 移住して6年が過ぎ、今では精神状態や考え方も大きく変わりました。

坂本:「周囲の同世代は旦那さんと普通に恋愛して結婚して、30代後半ともなれば家を買っていたり、子育てに忙しかったり。私も同じことがやりたかっただけなのになぜできないのかと、離婚後は人と自分を比べてひがんでばかりいました。丹波山村の人たちはすごく優しくて、普段は気を遣っていても、困っている時は絶対にかけつけてくれるんです。村に来てからは『自分の存在が人に迷惑をかけている』という妄想が解け、自己肯定感を取り戻すことができました」

 開店2周年記念のイベントを開けば、頼まれなくても写真集を作って後日持参する客がいるほど、常連からも慕われている坂本さん。本来の明るくポジティブなキャラクターが村内外の人々を惹きつけ、そこからファンの輪が広がっていく――そんな好循環が生まれていることは、小さな村で商売が成り立つ秘訣に直結していると感じました。

【松岡瑛理】

一橋大学大学院社会学研究科修了。『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部へ。小学校時代、人口約550人の長野県下伊那郡売木村に1年間山村留学をした経験があり、地方の話題に関心がある。Xアカウント:@osomatu_san