◆とにかく金と安心を。貧困女性の満たされない“欲望”

「一度でいい。腹の底から金と安心が欲しい」。これは第一話のリキの台詞。彼女にはやりたい仕事も、夢もありません。とにかく、現状から抜け出したい。その一心で前に進みます。前段のエピソードだけを読むと、リキは行き当たりばったりで流されているように見えるかもしれません。しかしそれは違います。

当初、友人のテル(伊藤万理華)から“卵子提供”のアルバイトを持ち掛けられた際は、「自分の卵子に、知らない男の精子を入れられて知らない女のお腹で育つんでしょ。それ私の子どもじゃない」と。立ち止まり考える聡明さを感じさせる場面は、ところどころで見受けられます。しかし、彼女が置かれている状況がそれを許さない。食べたくてもサラダのひとつも買えず、安価な炭水化物を買う“貧困”がリキの現実です。

“代理母”になることを決めて、お金を手にしても、不安からは逃れられない。満たされない。“産む機械”のように扱われる憤りも、命がけで“産む”ことへの不安も、それらをセックスで紛らわせる衝動も、決して否定できないリアルさがあります。彼女の“欲望”は、「自分がどう生きたいか」を自由に選択できる人生を手に入れることなのかもしれません。リキにとって理不尽に満たされない“欲望”は、彼女の “叫び”となって私たちの心を抉(えぐ)ってくるのです。