◆「安全配慮義務」が語られぬまま議論が白熱
「埼玉県虐待禁止条例」の改正案では“小学3年生以下”の児童を対象とした「放置」禁止に加えて、小学4年生~6年生までの「児童」を持つ保護者に対して「放置」しないよう、努力義務も要請していました。
さらに、埼玉県民が「虐待を受けた児童」などを発見した際、すみやかに「通告又は通報しなければならない」として、一部では「相互監視」になると批判が上がっていました。
2023年10月10日、世間の声に反応した埼玉県議会の自民党県議団は改正案の撤回を発表。同日10時までに埼玉県には反対意見が871件、賛成意見が2件寄せられたといいます。
ただ、今回の改正案では一部メディアで「留守番禁止条例」「トンデモ条例」とセンセーショナルな見出しが踊ったのも、混乱をもたらした要因と言えます。
今回の改正案を提出した自民党県議団の田村琢実団長は会見で、反省の弁を伝えながらも「議案の内容は私は瑕疵がなかったと感じています」と述べたといいます。
もともと「埼玉県虐待防止条例」では「虐待」に伴う「養護者の安全配慮義務」を定めています。例えば、保護者が児童の登下校にあたりブザーを持たせるなどすれば「安全配慮義務」を満たしていると考えられますが、田村団長は結果、改正案の提出時に説明が「抜け落ちてしまった」と伝えました。
一連の騒動では、いかなる状況でも“小学3年生以下”の児童を「放置」することそのものが一律禁止されるかのような表現が、メディアをはじめ、独り歩きしてしまったともいえそうです。
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