◆伊藤沙莉の解釈

『虎に翼』
 そんなあっぱれな「はて」が、猪爪寅子を象徴する必殺フレーズとして、今年の流行語候補にあがってもなんの疑問もない。戦中に日本初の女性弁護士、戦後には裁判官になった三淵嘉子をモデルとする本作への敬意も込めて。

 2024年3月21日にNHK放送センターで行われた出演者の会見では、寅子を演じる伊藤が、丁寧な「はて」の解釈を披露した。自分の感情をひた隠しにすることを強いられた女性たちが、そろって無感情を表す「スンッ」とした状態でいるしかなかった時代をつんざく「はて」とは。

 伊藤自身が抱く疑問をも「代弁」するという「はて」を発する上で、彼女は「劇中の『はて?』に対して、疑問を持たずに『はて?』って言えるんです」と言っている。これは興味深い。伊藤が寅子役を通じて「はて」を発するとき、ほとんど自動的な発語のように聞こえるのはそのためか。