◆疑問としての「はて」
時期尚早だが、筆者の中での2024年流行語大賞はすでに決まっている。4月から放送が始まった朝ドラ『虎に翼』で、伊藤沙莉扮する主人公・猪爪寅子がシグニチャーのように連発する「はて」である。
毎話必ず繰り出されるこの「はて」は、社会の当たり前に対する痛烈な疑問符である。最初に耳にしたのは、第1週第1回。嫌々のお見合い場面。相手の横山太一郎(藤森慎吾)に好感を持ったものの、太一郎を上回る時事批評を矢継ぎ早に繰り出した寅子が「女のくせに生意気な」と言われる。これに対して素直な疑問を抱いた。
男女同権を著しく欠いていた時代。ましてや公の場で女性が男性に「はて」を発することは、太一郎が言うように分をわきまえない態度とみなされただろう。でもそのことに何の躊躇もなく、スパンと疑問を突きつける寅子のソーシャルな人物像はすがすがしい。