■2007年 第7回大会
史上初めて、最終決戦の投票が3組に割れた大会。トータルテンボス2票、キングコング1票、そして4票を集めたサンドウィッチマンがシンデレラストーリーを見せつけた。
・キングコングって、やっぱすごい
第1回大会以来、7年ぶりの登場となったキングコング。すでに『はねるのトびら』(フジテレビ系)で全国的なブレークを経験し、『M-1』挑戦には失うものの方が大きかったはずだが、仕上がり倒したネタで650点を獲得。敗者復活のサンドウィッチマンに抜かれたが、その点差はわずか1点だった。いろいろ言われるけど、なんだかんだ漫才が上手いんだよなぁ2人とも。
・施工主のバカ!
3度目のファイナルとなったトータルテンボスも、ラストイヤーを迎えて徹底的に仕上げてきた。『爆笑オンエアバトル』(NHK総合)で無双し、この年は『M-1』優勝を狙って獲りにいったと公言している2人は、ファーストステージで勝負ネタ「旅館」を披露し、646点を獲得。「ボイラー室の場所」「施工主のバカ」など印象的なワードを散りばめた名作だった。なんだかんだ漫才が上手いんだよなぁ2人とも。
・ドラマとキャラクターがすべてを覆す
というわけで、ハイスキル、ハイテンポな2組が待つスタジオ。しかもキングコングはテレビスターだし、トータルテンボスは静岡出身なのに渋谷系とかいわれてるし、要するにスタイリッシュでスマートな漫才師が勝つ流れになっていたのが07年。この2組と3番手のハリセンボンの差は38点も離れており、ラストに登場する敗者復活の漫才師がコケればスタイリッシュ&スマート対決になっていたことになる。
そこに現れたのだ、あのサンドウィッチマンが。
今でこそ人柄もよく知られ、国民的なタレントとなった2人だが、当時は本当に誰も知らなかった。当然、伊達みきおもヤバいが、髪の毛ボサボサの富澤たけしもなかなかにヤバい。スタイリッシュ漫才フェスに紛れ込んだヤカラである。
「いちばん興奮するのは、急いでるときにされる街頭アンケート」
伊達のネタ振りはまったく意味がわからないが、すでに観客は受け入れ態勢だった。
キングコングやトータルテンボスに比べて、どう考えても報われてなさそうなキャラクターのサンドウィッチマンに、誰もがドラマを求めた。「おもしろいだけじゃ勝てない」初めて、そう思った『M-1』だった。
(文=新越谷ノリヲ/【2008-2010】へ続く)