そうやってお話としてはかなり乱暴なことをやりながら、一方で脚本や演出方面では、むちゃくちゃ丁寧に作っているのがこのドラマの特徴です。

 高次機能障害を負った患者が最初は無心にリハビリに励んでいたところ、その効果が出始めて情緒を取り戻し始めると、不安や絶望が募って希死念慮に苛まれることがある。このへんはちゃんと勉強して作っていることがうかがえるし、前回ちょっとだけ含みを持たせた看護師さんの正体を隠しておいて、高校時代にハルトが痴漢に遭っていた女の子を助けたことがあるというエピソードをサラッと差し込んでくる。

 ハルトが目覚めてから、徐々に心を揺らしていく心象表現の芝居も実に冴えています。ちゃんと顔が変わっていく、目が変わっていく。時おり差し込まれる高校時代のハルトに近づいていく。強いディレクションの効いた演技を要求されているし、ゴードンもよく応えています。

 身もふたもない言い方をしてしまえば、すげえつまんない話を、すげえちゃんとしたプロの仕事で撮ってる。