◆画面を絵画に変えてしまう人

『虎に翼』
 あぁ、そうだ岩ちゃんが『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ、2023年)で不倫夫・新名誠を演じたとき、不倫相手の主人公・吉野みち(奈緒)に砂時計をプレゼントする場面(第4話)があったが、あの砂時計もやたら絵画的な小道具に写っていた。

 岩田剛典とはテレビドラマのワンショットを絵画に変えてしまう人でもある。『虎に翼』の場面をさらにさかのぼってみる。第6週第30回、女性初の弁護士になった寅子に花束を渡す場面。

 後ろ手に持った花束をパッと差し出す。第32回と時間帯は違い昼。でも噴水を背景にするふたりのツーショットは同じ。次のカットで花岡のアップが抜かれる。その瞬間の岩田の素晴らしい表情ったらない。

『プロミス・シンデレラ』(TBS、2021年)や『あなたがしてくれなくても』など、常に見送る側の人を演じてきた岩田が、『虎に翼』で見送られ、追想される側に初めてなったことを考えると、ところどころ青みがかった晴れやかな曇天の下、寅子を心から祝福するあの表情が、本作の物語を底から支えていたんだと思いたくなる。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu