◆伏線回収ブームの火付け役になったドラマは
SNSで伏線の目撃情報を共有して、どのように回収されるのかを考察する、という風潮にチクリと刺す内容だった『不適切にもほどがある!』7話。こうした伏線回収ブームは2019年に放送されたドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)で一気に過熱して、ミステリードラマに限らず、あらゆるジャンルのドラマでもSNSで考察する流れが定番化した。
SNSで意見を言いながら鑑賞することはシンプルに楽しいが、なにより“安全性”もブームの背景にあるのではないか。伏線回収は言い換えると“答え合わせ”。ドラマにおける“答え”は基本的に犯人やトリックであり、つまりは1つしかない。1つしかない答えを考察した投稿をするほうが、自身の感想を投稿することよりもハードルは低い。
ドラマの感想を自由に投稿した場合、真逆の考えを持つ他者から攻撃されてしまうのが昨今のSNS事情。場合によっては吊るし上げられ、炎上してしまう可能性も少なくない。仮に予想が外れても感想が外れるよりはリスクが低く、考察するほうが手ごろに承認欲求を満たすことができる。時代とマッチしたことも伏線回収ブームの要因のように思う。