■いやによくできてるんだ
『南くんは恋人!?』というドラマ、そのチープな画面やレトロな雰囲気、コメディタッチに目隠しされていますが、とってもよく練られた脚本で作られています。
岡田惠和大先生なんだから当たり前だろって言われりゃそうなんだけど、それだけじゃないんだよな。大御所だから上手いって話だけじゃない。
1994年に武田真治と高橋由美子で撮られたドラマ『南くんの恋人』(同)は、たぶん岡田先生にとって初のゴールデン連ドラ全話担当だったはずです。まだ何者でもなかった35歳の若手脚本家が、きっと必死で『南くんの恋人』という原作のドラマ化について考え抜いたんだと思うんです。人が小さくなるとはどういうことか。そのギミックによって、何が伝えられるのか。最終回にクレームの投書が相次いで、急遽続編を1話作ることになるという試練もあった。
そうして武田真治と高橋由美子の『南くんの恋人』は、ドラマ史上に残るエポックとなりました。あの時代を生きていた日本人は、「人間がちっちゃくなる」という現象を見ると、ひとり残らず、ちっちゃくなった高橋由美子を思い浮かべながら「南くんの恋人じゃん」と口にするのです。