そんな南くんが、今できる方法で自分の尊厳を取り戻すさまが描かれます。南くんはちよみちゃんに頼んで、バスケ部の練習に赴きます。そしてちよみちゃんの口を借りて、チームメイトと監督にメッセージを投げかけます。

 おまえたちは最強だ。俺が戻れば無敵だ。

 南くんの言いたかったことを、ちよみちゃんは「LINEが来た」とでもいってスマホをカンニングしながら言ってもいいのに、丸暗記して、しっかり選手たちの目を見据えながら伝えます。少しでも、南くんの言葉が伝わってほしい。そういう、強い思いを感じさせるシーンです。

 そして何より、「これは間違いなく南くんの言葉だ」とチームメイトや監督が実感しているところに感動するんです。ああ、そうやって南くんは生きてきたんだな。自分というものを、周囲にしっかり開いて生きてきたということです。NBA入りもウワサされるような選手が、今の仲間ひとりひとりをちゃんと見て、愛して生きてきた。南くんがちっちゃくなって失ったものの大きさもまた、同時に描かれています。