◆貧困でも制度を利用して、夢を諦めないでほしい

――高校卒業後は、区役所職員として4年働いた後、漫画家を目指して退職、とのことですが、家庭の事情を考えると新たな一歩を踏み出すのも勇気が必要だったかと。夢を諦めずに前に進めた理由とは?

五十嵐:漫画に寄せられた感想のなかにも「どうして安定した仕事を辞めてしまったのか」や「また困窮に戻ってしまうのでは」といった心配の声がありました。でも、私は小学生の頃から「漫画家になりたい」と宣言していて、区役所を辞めるときも身近な人から反対されず、むしろ応援してもらえたんです。

在職中に生活防衛資金として300万円を貯めて退職しましたが、そもそも貧困生活に慣れていて、収入が少ないときの税金の免除制度も知っていたので、思い切った行動に出られたのかもしれません。

『東京のど真ん中で、生活保護JKだった話』23話より
『東京のど真ん中で、生活保護JKだった話』23話より
もしも生活保護制度がなかったら、私は高校を中退せざるを得なかったかもしれないし、今とはまったく別の人生を歩んでいたと思います。私と同じような状況にある子どもたちには「夢を諦めないでいいんだよ」と伝えたいです。日本には、みなさんが思っているよりも人々に優しい仕組みや支援制度がたくさんあります。

せっかくこの国で生活しているのだから、ぜひ活用してほしいし、その選択を受け入れる社会になってほしいと願っています。

<取材・文/とみたまゆり>

【とみたまゆり】

週刊誌や漫画の書評などジャンルにこだわりなく執筆する中堅ライター。三毛猫が好き