◆目を背けたくなる性的暴行シーンの狙い

 そもそも、高校生の喫煙や飲酒のシーンを撮ることに抵抗はなかったのか。倉地氏は「弊社の温かく寛容な編成に感謝しています」と笑顔を見せる。

 それでも。3話ラストにQの姉・淳子(桜井日奈子)に宝来隼人(鈴木仁)が性的暴行を加えるシーンは生々しく目を背けたくなった。このシーンを撮影するうえでどのようなことを意識したのだろうか。

「宝来の暴力性や淳子に同情を抱かせるよりも、Qが“姉を助けることができない”という葛藤を表現したかったシーンです。淳子の部屋で卑劣な被害が現在進行形で行われているにもかかわらず、その現実から目を背けるQ。彼の葛藤を伝えたいため、Qが膝を抱え塞ぎ込むカットを長尺にしました。Qの葛藤をしっかり見せることにより、4話でQが宝来に怒りをぶつける姿に説得力を与えられると考えたからです。

 同様にセンシティブなシーンで言いますと、5話ラストにラブホテルでQとセイラ(松本穂香)がキスをするシーンがあります。ここでは後々明らかになる“セイラが抱える闇”と言いますか、『なぜセイラは達観しているのか?』という背景を臭わせることを意識して撮影しています。しっかり描かないとセイラの闇は十分伝わらないため、センシティブなシーンですが最大限キャストの意見を取り入れつつ、最大限にケアをしながら挑戦しました」

 コンプライアンス的にはグレーゾーンなシーンが連続している『95』。ただ、それは視聴者によりよく楽しんでもらうことを重視した結果なのだろう。