◆「岩田剛典マニアじゃないですか!」

岩田剛典
 後半戦でもまだうわずったままでいるぼくは、岩田さんが饒舌になるのをいいことに、妄想ぎみの問いかけを恥ずかしげもなくどんどん放った。「よく気づきました!」という具合に数々の神対応で応じてくれたのは奇跡に近い。

 ここからは、MATE必読のBlu-ray映像未収録内容(!)。「Just You and Me」の「You」と「Me」がもしかして『シャーロック』(フジテレビ、2019年)の誉獅子雄(ディーン・フジオカ)と若宮潤一(岩田剛典)なんじゃないかと指摘したときには、さすがに失笑を買うかと思えば、今度は「何でわかったんですか!」とユーモラスな調子で逆質問。

 図に乗ったぼくは懲りずに応酬を重ねる。アーティストとしてだけでなく、俳優・岩田剛典が、『ウェディング・ハイ』(2022年)や『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』(2022年)から『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』(2023年)や『誰も知らない明石家さんま』(2023年11月26日放送回)内の再現ドラマ「笑いに魂を売った男たち」へ出演歴を重ねる過程で、演じる役柄からイメージされるものが、“振り返る人”から“鏡の中の人”へとより繊細で鮮やかな宇宙的次元に到達しているのか、興奮を隠さずに伝えもした。

 収録後、このコラム用の特別撮り下ろしに付き合ってもらい、岩田さんは三代目JSBドームツアー会場へ移動する。サングラスをかけてシンプルに仕上げるARTLESSな実践的スタイルのカッコよさを見送るとき、やれやれ、若干曇っていたぼくの妄想像レンズもやっと目の前の光景に対して遠近がアジャストされたように思う。

 そして帰り際、ぼくの元にスタッフのひとりが小走りでやってきた。あぁ、これはちょっと聞き手にしては喋り過ぎちゃったかと即座に猛省するのも杞憂。「岩田剛典マニアじゃないですか!」という褒め言葉を聞いた途端、全身が脱力して、この名誉な体験を早くも追想した。

<取材・文/加賀谷健 撮影/鈴木大喜>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu