◆脱力感が基本姿勢

岩田剛典
 考えてみると、それもそのはず。2ndアルバム『ARTLESS』が意味するのは、技術や芸術に拘泥することなく、飾らない“ありのまま”の姿だったから。確かに収録中、椅子にゆったりと腰掛ける岩田さんは、粋そのもの(某局での独占取材。楽屋中央に置かれた簡易椅子に悠然と座り、取材に応じる三代目JSBツインボーカル、ØMIさんのジャズ的な佇まいが思わずフラッシュバック……)。

 お手本のような脱力感が基本姿勢。収録直前、カメラ袖で岩田さんとスタンバイして軽く会話を交わしたときからすでに、「あれっ、やけに脱力されているな」と感じたのは的外れではなかった。

 それは今回のアルバム作りの前提になっているからだ。1stトラックとしてリード曲「Paradise」を配し、岩田さんらしい作詞の技がきらめくフレーズが見事にシームレスに曲順を流してくれる。ただし、コンセプチュアルになり過ぎない、控えめな見え方が本作のミソ。

 このシームレスな感じ、どこかマーヴィン・ゲイ的でもある。各トラックは、そうだな、例えば80年代UKソウルのグランド・ビートのように洗練されたノリを感じる。完成度や出来栄え以上に自分がライブのステージで、その曲をパフォームしたときの青写真が常に描かれてもいる。柔軟さと明確なビジョンに揺るぎはない。