◆大切な人を亡くした人の心のケアになることも

――さまざまなお客さんがいる中で印象的なエピソードがあれば教えてください。

ショールームに来てくださるお客様の中には、自身のことについて話してくださる人もいます。以前、製品をお送りした後にお客様から感想をいただいた際、「普段は病院勤務ですが、まさか自分の子どもを見送ることになるとは思いませんでした」とお話しいただいたことがあります。

この話を聞いたとき、お金持ちであろうが、職業がどうであろうが関係ないんだなと感じました。亡くなる背景も、病気や自死など、みなさんさまざまな事情を抱えています。でも、共通しているのは大切な人を見送った経験です。その点で、みんな同じ方向を向いていることを再認識しました。

仏具、骨壷カバー
――お客さんと会話する中で、故人の方が亡くなった背景などがわかることもあるのでしょうか?

お客様からお話したくないという方もいらっしゃると思うので、私から詳細を質問することはありません。ただ話をしてくださる方には、大切な方の名前、その方の思い出やご経験についてお伺いしながら、制作を進めています。

制作に注力しすぎて、イメージと完璧にマッチしていなければ受け入れられないという方もいらっしゃるのですが、手作りにはイメージを具体的な形にすることが難しい場合もあるのです。その点はお客様にもお伝えしています。

精神的なケアを求めている方であれば、毎月開催している少人数制のお話し会もあります。そこでは、悲しみを吐き出したり、大切な人についてお話したりできますし、参加者が話したいときに気軽に寄っていただけます。

――仏具の制作・販売以外にも活動されているのですね。

ほかにはボランティア活動を行っています。具体的には、娘がお世話になった先生や看護師さんに対して直接何かをすることは難しいので、子どもの入院施設への寄付というかたちで支援をしたり、オンラインでのお話や講演会を通じて、病院や医療関係者、そして今闘病中の子どもたちやご家族にエールを送る活動をしたりしています。11月9日にもグリーフケアの講演イベントを企画しています。ご興味がありましたら、詳細をお問い合わせください。