■なんか、嫌だったなぁ、すごく

 未亡人は納得して涙を流して大団円だったんですが、なんだかずっと嫌な感じだったんですよね。

 男性が自殺だったという結論で捜査が終了し、そこからサクラとマコトは仕事をサボって独自に男性の身元を突き止めようとするわけですが、そのシーンがずっとコメディタッチで描かれるんです。

 上司からは、いろんな事情があるんだからもう遺族には立ち入るな、と命令されている。その状況で、どうしても真相を解明したいという気持ちで勝手に捜査する。そこまではいいんですが、その捜査に向かう前に2人にキックボクシングジムで運動させて、汗だくで「やるぞ!」みたいなシーンがあるんですね。仕事としてのモチベーションでもなく、真相を明らかにすべきという衝動にかられるわけでもなく、すごく自己満足を求めて捜査をしている感じがする。そうかと思えば、サクラは自分の自殺未遂の経験を根拠に、未亡人に対して「自殺する人はこうこうこうだから、彼は自殺じゃない」って断言したりもする。

 上で「行旅死亡人っておもろい」とか書いておいて言うことじゃないけど、この2人がやっていることは基本的に不遜だと思うんです。サクラは「死んだ人にも心がある気がする」とか言うけど、相手が死んでるのをいいことにプライバシーにずんずん踏み込んでいく。バスケチームの同僚に聞き込みに言ったり、何度も未亡人の家を訪れたり、死んだ人と遺族に対して「真相の究明」を盾にすごく失礼なことをしているように見える。そう見えるのは行動の内容ではなく、コメディタッチを選択していることも影響していると思うんですが、「自殺じゃない」という結論ありきじゃなきゃ成り立たない行動ばかりを見せられた感じがするんです。

 最後に「これでよかったのかしら」ってエクスキューズを入れてるけど、やってる途中はまったく「これ、やってていいのかしら」って逡巡がない。