続くクライミング施設では、突起物が埋まっている高さ6メートルの壁に、ハーネスを装着させた濱田を登らせて見せる。濱田にとっては当然、人生初のクライミングだというが、思いのほかスイスイと登っていく姿を見ていると、なぜだか笑いがこみあげてくる。

「おかしいやん、めっちゃ登れるやん」というトキのツッコミに、思わずテレビの前でこちらも「なんで登れんねん」とつぶやいてしまう。実際にはパラクライミングという同様の競技があってワールドカップも開かれているそうだが、見事に壁を登り切った濱田を見上げる面々が爆笑している様子もまた、あまり見たことがない風景である。

「こっからどうしたらいいの!?」

 6メートル頭上で戸惑う濱田に、係員が答える。

「目の前にあるロープを両手で持っていただいて、壁を蹴るようにして……」

 「目の前にあるロープを」という指示は、濱田にはなんの意味もなさない。