◆ちゃんと嫌いでよかったし、ちゃんと好きになれてよかった

さらにカメラが止まってからの秘話も。

「劇中を通して、自分という存在をぶらさずに貫いてきた道長という人物が、これだけぶれてきた兄に対して、最後に寄り添ってくれたことに、すごく救われました。佑くんが道長でよかったし、佑くんと今回共演できてよかったと思いました。

いろんな思いが渦巻いたら、カメラが止まっても咳がとまらなくなっちゃったんです。そしたら佑くんがずっと背中をさすってくれて、“辛いよね、辛いよね”と言ってくれて。そのことも、自分の役割を、死を全うできるなと思えて幸せでした」

そして最後に、最初は大嫌いだった道兼から道長への思いを口に、玉置は道兼を生きた充足感の笑みを見せた。

「たとえばちょっと好きになる要素が描かれて、だんだん好きになっていったんじゃなくて、ずっと嫌いでガラッと変わるのって、ドラマチックさも生まれたと思うし、“今超好き!”みたいないい流れだったと思います。ちゃんと嫌いでよかったと思うし、ちゃんと好きになれて良かったなと思いました」

<取材・文/望月ふみ>

【望月ふみ】

70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi