「死んでもいい」と言う少女に、ヨウコさんはペヤングをむさぼりながら「わしは悲しい」と断言します。自分はたくさんの人間が死ぬところを見てきた。心臓が止まり、息が止まり、冷たくなる。それがつらい。だから、「おめえ死んだら、ぼっけえ悲しい」。

 ホス狂の女性は、飛び降りて未遂に終わった人たちの症例を見せられて「死ねないんですか?」とヨウコさんに尋ねます。

「死なん。ここにわしがおるからじゃ」

 女性は「やめよっかな」と思いとどまることになります。

 2人の女性は、それぞれに「死にたい」と思っていました。そしてそれぞれに、「死にたい」と「死ぬ」との間に距離がありました。

「死にたいとか言って、どうせ死なないだろ」と言うのは簡単です。実際、ほとんどの人は死にません。でも、何人かは死んじゃう。ホントに死んじゃう。大人になると周囲にそういうことが起こるし、だからこの女性たちの「死にたい」と「死ぬ」の間に全力で割り込むヨウコさんの姿が刺さってくるのです。