1,000錠飲んでも死なない市販の鎮痛剤を40錠ほど、イチゴミルクで流し込んで闇医者・ヨウコさん(小池)たちが勤める搬送されてきた17歳の少女は、目が覚めるとケロッとした顔で院内を徘徊。ヨウコさんに見つかると、「おなか空いちゃって」と肩をすぼめます。

 そこらへんにあったペヤングを作ったものの、少女は結局ひと口も食べません。ちょっと味見したヨウコさんがその美味さに驚愕し、結局ペロリと平らげてしまいます。

「OverDose(オーバードーズ)……」ペヤングを食べきった英語話者のヨウコさんはそうつぶやき、ドラマはそれに「食べ過ぎた」とだけ字幕を乗せました。

 エースの女性は、担当の売り上げのために風俗で働いていました。しかし何もかもが嫌になり、5階建てのビルの屋上から飛び降りるといいます。そこに居合わせたヨウコさんは、「この高さでは30%しか死なない」という事実とともに、後遺症の症例を写真付きで女性に見せます。どれもひどいものです。昔、クドカンと一緒に大きな仕事をしたことのある俳優が、マンションの9階から飛び降りて生き残ったことがありました。このシーンを書いたとき、クドカンの頭にその俳優のことがあったことは間違いありません。

 こうしたシーンが、ドラマの豊かさだと感じるわけです。テレビドラマという限られた時間の尺を、贅沢に使っている。こうした豊かなシーンに心を揺さぶられると、隙間が生まれるわけです。そうして生まれた隙間にメッセージを流し込まれることで、ヨウコさんの言っていることが心の中に残っていく。