◆『silent』は冬のブルー、今回は夏(summer)のブルー
夏なのに、どこかひんやりしたブルーの色味は、海や死を思わせる。窓ガラスの透明感をはじめとして、なにげない電車の手すりまで薄いブルーに見える。
これは生方美久脚本、風間太樹監督、村瀬健プロデュース、目黒蓮主演で社会的ブームを巻き起こした恋愛ドラマ『silent』のときも愛された風間ブルーである。『silent』は冬のブルーだったが、今回は夏(summer)のブルーだ。
主人公・夏のこれからが気になるのは無論だが、この非常事態を見て最も気になったのは、現在の夏の恋人・弥生のことだった。彼女が元カノとの子供がいることを知ったら当然動揺するだろう。
第1話のほとんどが、夏と水希との回想で、それがあまりにキラキラしていて、ちょっと弥生の立場がないだろう。そのうえ、夏が別れて8年もの間、スマホに水希のムービーや写真を残してあった事実がキツイ。
いま、水希が生きて現れるよりも、美しい思い出は最強なのである。
<文/木俣冬>
【木俣冬】
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami